【MR認定センター】MRは「チーム医療外」で‐客観的視点でサポートを https://www.yakuji.co.jp/entry64073.html
こんな記事が薬事日報にでていました。
この記事の反応を見ていると、「営利目的なんだから当然じゃないか」「MRは都合のいいことしか言わない」「MRの中にも役に立っている人はいる」などと様々なものがあります。
これらの意見はそれぞれの立場からの見方なので、合ってる・間違っているということはいいませんが、仕事をしてきた者として残念なニュースとして捉えています。
まずMRの定義から再確認したいと思います。
医薬情報担当者とは、医薬品の適正な使用に資するために、医療関係者を訪問すること等により安全管理情報を収集し、提供することを主な業務として行う者をいう。
「医薬品等の製造販売後安全管理の基準に関する省令(GVP)(厚生労働省令第135号)」
MRの仕事は医療機関を訪問することにより、自社の医療用医薬品を中心とした医薬情報(医薬品およびその関連情報)を医療関係者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師など)に提供し、医薬品の適正な使用と普及を図ること、使用された医薬品の有効性情報(効き目や効果的な使い方)や安全性情報(副作用など)を医療の現場から収集して報告すること、そして医療現場から得られた情報を正しい形で医療関係者にフィードバック(伝達)することなどを主な業務としています。
「MRセンター」
この二つの定義の大きな違いはMRセンターの定義では「普及」という言葉が入っています。普及とは何かというと販売促進活動ということです。
MRセンターはもともと日本製薬工業協会(製薬協)の教育部会がMR認定資格制度を立ち上げる時にそこから独立した団体です。つまり製薬企業の考え方を受けていると判断してよいかと考えます。またMRセンターは基本的に製薬企業のMR認定証にかかわることが収入源であることからCOI的にも製薬企業の影響が大きいと言えます。
そこが今回下記のような発言をしたのです。
「チーム医療の一員となり、医薬品の情報提供を通じて医療に貢献することを目指していたが、製薬企業には患者情報へのアクセスが制限されていること、MRが医療国家資格ではないことから、チーム医療の構成メンバーとして業務を行うには限界があると判断。チーム医療からは独立して、担当エリアや医療機関に関する様々な情報を活用し、医療関係者とは異なった視点で医療をサポートしていくことが、目指すべき新たなMR像となるという。」
ここで疑問がでてくるのは「製薬企業には患者情報へのアクセスが制限されている」「MRが医療国家資格ではない」の二つです。
前者の「製薬企業には患者情報へのアクセスが制限されている」はプロモーションコードで縛られている部分を指します。プロモーションコードは製薬業内の自主規制です。この制限というのはどこまでのことを指しているのでしょうか。カルテ情報を勝手に閲覧してアンケートに答えるというのは当然アウトですが、症例に関して議論を行うときに必要な情報までを指すのでしょうか。現状のプロモーションコードは企業側が君子危うきに近寄らず的にMRが何か問題を起こすことを怖がって添付文書以外のことしか話せなくしているだけにしか過ぎないと思います。
また後者の「MRが医療国家資格ではない」はMR認定制度を作るときにもMR100周年のビジョン策定時にもMR認定資格を国家資格にするべきという議論も上がっていたのですが、(有料分の)本文中にあるとおり「企業に所属するMRが資格を取得できない場合には異動が制限され企業の人事戦略大きな影響を与えてしまう可能性を懸念し・・」としています。つまり企業側はMR認定資格に合格できない人間でもフィールドに出したいということを言っているのです。
ここまでを整理すると製薬企業はMRを自社製品の普及を重んじるために一定水準を下回るMRを現場に配置させることを厭わないという意思を暗に提示したことになり、一定の水準を下回っていると思われるMRが企業の信頼を損ねるのを防ぐためプロモーションコードで自分たちを守っていると読み解けます。
MR認定制度は一定上の成果をあげ、業界全体として知識の底上げができたと考えられますが本当に世の中に求められているMRとなっていったのでしょうか。
MR認定試験の合格率は過去の累計で8割弱です。(https://www.mre.or.jp/info/examination_result.html)
大手企業では少ないのですが何度受験しても合格できない人というのは確実に存在します。合格後は企業ごとに企画された研修の時間数を一定時間超えれば認定証は更新でき、認定証を取った後の継続研修の質は担保されていません。そして資質ということではスキルや態度などは客観的なもので担保されているわけではありません。
MR認定資格や継続研修のありかたはこのままでいいとは言えないと思います。
今回の「チーム医療外で」という文字を読んで思ったことは、制限が厳しくなっているプロモーションコードと同様に「あ、また逃げた」です。
チーム医療の一翼を担うということは医療者と一緒に患者にとっての最善を考えることをするということです。そこをはじめから目指さないといっているのですから、製薬企業は自社MRに対する信頼もなく普及に勤しみたいと考えていると言わざるを得ません。現状からすると現実的といえばそういう見方もできますが、患者を含めた社会からの要請に逃げているにすぎません。
ではMRをどうするのがいいかを私なりに意見を述べると私の一番の主張は「過去の薬害事件のことも踏まえると製薬企業の責務として最も大事な活動はPMSである」ということです。
そのためには
①PMSと普及は分離する。その結果としてMRの名称が変わるのは仕方ない。
②継続教育は企業が行う部分とそれ以外のもの(ボランティアや一定のレベル以上の研修機関など)を組み合わせて行う。
③MR認定資格を持たない者は担当を持たせない
④質を担保するためにもMRの人数を減らす 人工知能もあり
⑤MR認定資格の更新は個人が行う(現在は企業に勤めていないものだけが個人で行っている)個人の責任で時間数も含めて管理をするべき。
本当はまだまだ浮かびそうですがこのくらいにしておきます。
かなり踏み込んで書いているので、色々と反論はあると思いますがこのくらいしないと製薬企業が社会に信頼されて患者の薬物治療に貢献はできないと考えている元MRの意見です。
この記事の反応を見ていると、「営利目的なんだから当然じゃないか」「MRは都合のいいことしか言わない」「MRの中にも役に立っている人はいる」などと様々なものがあります。
これらの意見はそれぞれの立場からの見方なので、合ってる・間違っているということはいいませんが、仕事をしてきた者として残念なニュースとして捉えています。
まずMRの定義から再確認したいと思います。
医薬情報担当者とは、医薬品の適正な使用に資するために、医療関係者を訪問すること等により安全管理情報を収集し、提供することを主な業務として行う者をいう。
「医薬品等の製造販売後安全管理の基準に関する省令(GVP)(厚生労働省令第135号)」
MRの仕事は医療機関を訪問することにより、自社の医療用医薬品を中心とした医薬情報(医薬品およびその関連情報)を医療関係者(医師、歯科医師、薬剤師、看護師など)に提供し、医薬品の適正な使用と普及を図ること、使用された医薬品の有効性情報(効き目や効果的な使い方)や安全性情報(副作用など)を医療の現場から収集して報告すること、そして医療現場から得られた情報を正しい形で医療関係者にフィードバック(伝達)することなどを主な業務としています。
「MRセンター」
この二つの定義の大きな違いはMRセンターの定義では「普及」という言葉が入っています。普及とは何かというと販売促進活動ということです。
MRセンターはもともと日本製薬工業協会(製薬協)の教育部会がMR認定資格制度を立ち上げる時にそこから独立した団体です。つまり製薬企業の考え方を受けていると判断してよいかと考えます。またMRセンターは基本的に製薬企業のMR認定証にかかわることが収入源であることからCOI的にも製薬企業の影響が大きいと言えます。
そこが今回下記のような発言をしたのです。
「チーム医療の一員となり、医薬品の情報提供を通じて医療に貢献することを目指していたが、製薬企業には患者情報へのアクセスが制限されていること、MRが医療国家資格ではないことから、チーム医療の構成メンバーとして業務を行うには限界があると判断。チーム医療からは独立して、担当エリアや医療機関に関する様々な情報を活用し、医療関係者とは異なった視点で医療をサポートしていくことが、目指すべき新たなMR像となるという。」
ここで疑問がでてくるのは「製薬企業には患者情報へのアクセスが制限されている」「MRが医療国家資格ではない」の二つです。
前者の「製薬企業には患者情報へのアクセスが制限されている」はプロモーションコードで縛られている部分を指します。プロモーションコードは製薬業内の自主規制です。この制限というのはどこまでのことを指しているのでしょうか。カルテ情報を勝手に閲覧してアンケートに答えるというのは当然アウトですが、症例に関して議論を行うときに必要な情報までを指すのでしょうか。現状のプロモーションコードは企業側が君子危うきに近寄らず的にMRが何か問題を起こすことを怖がって添付文書以外のことしか話せなくしているだけにしか過ぎないと思います。
また後者の「MRが医療国家資格ではない」はMR認定制度を作るときにもMR100周年のビジョン策定時にもMR認定資格を国家資格にするべきという議論も上がっていたのですが、(有料分の)本文中にあるとおり「企業に所属するMRが資格を取得できない場合には異動が制限され企業の人事戦略大きな影響を与えてしまう可能性を懸念し・・」としています。つまり企業側はMR認定資格に合格できない人間でもフィールドに出したいということを言っているのです。
ここまでを整理すると製薬企業はMRを自社製品の普及を重んじるために一定水準を下回るMRを現場に配置させることを厭わないという意思を暗に提示したことになり、一定の水準を下回っていると思われるMRが企業の信頼を損ねるのを防ぐためプロモーションコードで自分たちを守っていると読み解けます。
MR認定制度は一定上の成果をあげ、業界全体として知識の底上げができたと考えられますが本当に世の中に求められているMRとなっていったのでしょうか。
MR認定試験の合格率は過去の累計で8割弱です。(https://www.mre.or.jp/info/examination_result.html)
大手企業では少ないのですが何度受験しても合格できない人というのは確実に存在します。合格後は企業ごとに企画された研修の時間数を一定時間超えれば認定証は更新でき、認定証を取った後の継続研修の質は担保されていません。そして資質ということではスキルや態度などは客観的なもので担保されているわけではありません。
MR認定資格や継続研修のありかたはこのままでいいとは言えないと思います。
今回の「チーム医療外で」という文字を読んで思ったことは、制限が厳しくなっているプロモーションコードと同様に「あ、また逃げた」です。
チーム医療の一翼を担うということは医療者と一緒に患者にとっての最善を考えることをするということです。そこをはじめから目指さないといっているのですから、製薬企業は自社MRに対する信頼もなく普及に勤しみたいと考えていると言わざるを得ません。現状からすると現実的といえばそういう見方もできますが、患者を含めた社会からの要請に逃げているにすぎません。
ではMRをどうするのがいいかを私なりに意見を述べると私の一番の主張は「過去の薬害事件のことも踏まえると製薬企業の責務として最も大事な活動はPMSである」ということです。
そのためには
①PMSと普及は分離する。その結果としてMRの名称が変わるのは仕方ない。
②継続教育は企業が行う部分とそれ以外のもの(ボランティアや一定のレベル以上の研修機関など)を組み合わせて行う。
③MR認定資格を持たない者は担当を持たせない
④質を担保するためにもMRの人数を減らす 人工知能もあり
⑤MR認定資格の更新は個人が行う(現在は企業に勤めていないものだけが個人で行っている)個人の責任で時間数も含めて管理をするべき。
本当はまだまだ浮かびそうですがこのくらいにしておきます。
かなり踏み込んで書いているので、色々と反論はあると思いますがこのくらいしないと製薬企業が社会に信頼されて患者の薬物治療に貢献はできないと考えている元MRの意見です。