2019年7月25日木曜日

セミナー「人工透析の中止問題を考える -福生病院の事例を軸に-」に行ってきた


今年の初めに福生病院で腎臓病の人工透析を中止した女性患者が死に至った事例が東京新聞に載りました。その少し前に落合陽一・古市憲寿の対談における終末期の話題もありの、そこででてきた福生病院事件だったので、世の流れと透析医療に関してはちゃんと本質を考えていくべきことと思い、ずっとニュースがでるとほぼすべて目を通していました。ニュースが出れば出るほど、疑問だらけだったし、それに対して様々な人が様々な意見がでており、真実が見えない事件です。そもそも事象に対する事実の捉え方は千差万別というところがあれば当然のことなんですが。。。

これまで研修会などで大変お世話になっている慈恵大学柏病院の三浦先生が登壇するということで参加してきました。

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<日時> 2019年 7月25日(木) 18:30 ~ 20:30
<会場> 東京都千代田区内幸町 2-2-1
     プレスセンタービル 9F 日本記者クラブ

パネリスト:
 宮本 太郎 氏 中央大学法学部 教授
 三浦 靖彦 氏 東京慈恵会医科大学附属柏病院 診療部長・准教授
 箕岡 真子 氏 日本臨床倫理学会 理事

コーディネーター:
 宮武 剛  氏   日本リハビリテーション学舎 理事長
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この事件での問題は単なる〇〇が問題だったというようなことではなく、どこかボタンの掛け違えだったり、プロセスに不備があったりのように思います。この3名のパネリストの話を伺い、人の死をどのように扱い、本人の自律性をどう尊重し、支えていくのかということの難しさを感じました。

日本の透析医療は世界に類を見ないほど素晴らしい。
2016年12月31日現在、透析患者は329,609人いる。その平均年齢は68.15±12.48歳。75歳以上は33.1%、85歳以上は7.8%、95歳以上は0.2%(691人)。透析歴40年以上は793名、最長48.4か月だそうです。
医学の進歩とこれを支える社会保障制度があったからのこの数字だとおもいます。

日本のダイアライザーの性能は素晴らしく、ディスポだし、透析の水などもいいものを使っています。高水準の医療をほぼ自己負担なく透析を受けられているという事実は知っておく必要があると思います。このことによって透析患者約33万人の命が救われているのです。

人は死から絶対に逃れられません。そして一人の人間としてどのような最期を迎えるか、誰かに強制されるのではなく自らの選択で生きることは尊重されるのでしょうか。
三浦先生は「自己決定権を基盤とした透析を拒否する権利は、透析に伴う患者の負担と、患者の利益との好ましくないバランスで倫理的正当性が認められる。このような決定は腎臓専門医と患者との間の相互理解による意思決定(Shared Decision Making))によってなされるべきとされている。生命倫理の原則における自律性尊重原則、無危害原則(医学的無益性)は日本で受け入れられるのか?」という投げかけをしていました。

今回の福生病院のことはまさにこのことだと私も考えています。

この事例がどこまで本人の自己選択だったのか、医学的無益性をどのように判断していくのか。これは本当にケースバイケースだと思います。それを終末期はどこを指すのかとか、苦痛緩和のための鎮静は安楽死とどう違うのかを厳密に区別なんてできっこないとこを議論しても目の前の人に当てはまらないような線引きができても仕方ない。

私は透析を行っている患者は終末期に含まれないとしたことで、本質から外れるガイドラインができてしまうのではないかと危惧してます。

ガイドラインはガイドライン。そこから外れる人だっていることを忘れてはいけないと私は思う。そこを責めるような風潮にならないことを祈っている。

そもそも、もっと広い意味で透析医療だけでなく、国民皆保険制度をどうやって維持していくかも含めて感情的にならない議論がすすんでいくことを願ってやみません。

2019年7月23日火曜日

「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」医薬品なんだから当然

あまりにも簡単なことを変な話になっているので書いておきます。





今日は日本医学ジャーナリスト協会の7月例会「製薬企業からメディアへの情報提供のあり方について」に参加してきました。日本記者クラブ(日本プレスセンター9階)が会場だったのですが、椅子だけの会場でほぼ満席でした。参加者はメディア、製薬企業、広告代理店等でした。

お話は、厚生労働省医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課広告専門官 石井朋之氏ほか2名からのお話でした。内容は「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」です。

(参考)医薬品の広告規制
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iyakuhin/koukokukisei/index.html


ディオバン事件、ブロプレス事件に端を発し、臨床研究法ができたり、プロモーションコードなどが変わったりしました。この「医療用医薬品の販売情報提供活動に関するガイドライン」もあらたに省令として発出されている。

今日の話はとてもシンプルで、何も広告規制といっても、これまでの法律の趣旨となんの変わりもありません。医薬品の適正使用推進のために科学的かつ客観的に情報提供をしましょうと言っているだけです。しかも、医療者、患者団体、一般市民からの求めに応じて情報提供をすることは問題ないとはっきり言っているし、その際も適応外であったとしても求めに応じることは可能であるとしている。(記録保管の義務は発生します)

これって別に何も規制してないじゃない!これを国の統制だとか言ったらおかしいです。
製薬企業が行政にお伺いをたててからじゃないと答えられないとか、間違いなく変です。

●●をしなければ大丈夫とか、大丈夫じゃないとか、そういう問題ではなくその行為がどういう目的をもつのかをトータルで考えられないのでしょうか。これではまるで「遠足のおやつは300円まで」「バナナはおやつですか?そうではないですか?」と全く同じ。

しかも適応範囲にメディアセミナーやプレスリリースが入っているというだけで、変にかみついている人もいる。厚労省の人も販売以外の目的が合理的に説明できれば、医薬品に絡む内容を話をしても問題ないと言っているのに、何がわからないかが全くわからない。
これは寧ろ医薬品のことを発信しているメディアがかなり高い医療リテラシーをもって情報発信する責任をもたなければならないことになるだけで、いまの世間一般の雑誌やTVを見ていて、メディア、広告代理店、本当に大丈夫なのか?と思ってしまいます。

販売促進企業の行為が利益供与にあたるものを、その企業が製薬企業に提案していることも存在することを本当にわかっているんだろうか。

学会だって、ちゃんと自分たちが学術集団であり純粋に学問をするならば、薬の適応外に関しても堂々と発表すればよいのです。そこを製薬企業からのお金をあてにして自分たちの頭で考えてこなかったからいけないのです。

ほんとになんなんだーと叫びたくなりました。