2017年9月26日火曜日

中動態の世界 読書会


バブリーズという仲間内で國分功一郎さんの「中動態の世界」を題材にした読書会を実施しました。タイトルはバブリーズのための「中動態ワークショップ」〜中動態ってなんだかよくわからないけど素敵〜 


ちょっといいお部屋を使わせていただいたのでなんだかちゃんとした読書会のように見えますが、あまり作り込まずに場の流れに任せて話をしました。読書会と言いつつもガツガツ本を読むのではなく、中動態についてのお互いの理解を話ながらどこにたどり着くかわからない対話を約二時間しました。あっというまでした。

能動態でも受動態でもないもう一つの態が中動態。中間ではなく第3の態です。

自分がしていることを振り返ると能動的でも受動的でもないけど行動していることは結構あります。しかし外から見ていると私の中で起こっていることは見えないので能動的(積極的)に何かをしているように見られることがあります。どのようなことが人の中で起こっているのかはわからないですが、でも何かによって人は動いている。

例えば「ともちゃんって一生懸命」って言われる時があるけど、単なる責任感で、やりたくなくても「一度受けた仕事はきっちり完遂するもの」だというメンタルモデルがあってただやってるだけということがあります。そこに自分自身でメンタルモデルがあるということに気づいていても、真面目な自分を手放せなくて行動している自分も存在したりもします。

自分の中に起こっていることならまだしも他人の中に起こっていることはわかりません。それを記述するのが中動態なのです。この場合、「ともちゃんが何事かによって仕事をしている」のであって、そこに意思はありません。

最近、中動態に関する話題が増えていますね。人々を惹きつける何かがそこにあるのでしょう。今回のみんなとの対話で、中動態で語られる世界って単純な二極化した単純な世界とは違って豊潤な世界なんだろうと思いました。

雲南市立病院の病院祭に行って来ました


地域医療を育てる会の有志で雲南市立病院 病院祭に参加しました。地域住民と病院が一緒になって地域医療を支えている事例としてよく名前が上がっており、また昨年の自治医大主催の「地域医療を守り育てる住民活動全国シンポジウム」でお会いした方々のと再会を楽しみにしていました。



こちらが病院の正面ロータリーです。JR雲南駅の目の前に病院があります。
病院に到着し、すぐに会が開始しました。


オープニングセレモニーは院内保育のみなさんです。とっても可愛らしかったです。


基調講演は、「在宅医療・在宅介護~うまく使って住み慣れた家でずっと過ごそう!~」ももたろう往診クリニック 小森 栄作 先生でした。

小森先生は岡山で開業していらしゃる先生です。自宅で枯れるように亡くなるということはどういうことなのかを実際の診療の事例でお話いただきました。
スタッフを集めるための動画をご紹介していただいたときには、聴衆のすすり泣く声が聞こえて来ました。


ランチタイムは錚々たる方々と昼食をいただきました。印象に残っているお話は、雲南の人は死を忌み嫌う土地柄ということです。小森先生のお話を市民の方はどのように受け止めたのでしょうね。家で亡くなるということを今後どうやって考えるかというのは、ここ雲南市でも課題のようです。胃ろうを単純に良い悪いだけで決めるものではないが、それを市民に理解して納得した医療を受けてもらうにはどうするべきかということをお話されていました。



食事のあとは院内を案内していただきました。


健康コーナーでは血圧などを看護師さんが測ってくれます。



私の気になったのは壁に貼ってあったまめネットです。

島根県全体でカルテを共有するシステムです。このシステムは電子カルテのメーカーはどこでもいいようです。かなりサーバーについても施設の任意度の高いネットワークの作り方です。この仕組みを県からNPOが委託を受けて保守管理を行なっています。病院・診療所の加入率は高いのですが、問題は薬局の加入率が低いところです。介護施設も繋がっているのに薬局が繋がっていないというのはどこに問題があるのか聞いてみたいと思っています。


病院は現在新棟立てています。来年の四月にオープンとのことです。建設中の建物を中から見させていただきました。



病院は配管や配線がいっぱい。


足場がなくなると広く天井が高いエントランスの予定です。この病院は災害拠点病院として指定されており、災害時にはエントランスも医療現場として使われます。

















この足場は工事のためにあるので、新棟ができたらこの場所には行けません。貴重な一枚です。


この建物は雲南市で初めて免震構造の建物となります。ブリジストン製のゴムを使用しているそうです。

















私はちょっと病院を抜け出し、趣味の神社探索に行って来ました。
須賀神社は日本で最初の神社(初の宮)です。病院から車で約10分くらいのところにあります。
http://suga-jinja.or.jp/ 


















あと須賀神社の奥宮である夫婦岩も見にいってきました。ここにたどり着くには急な坂があるのでちょっと大変です。
http://www.unnan-kankou.jp/contents/orochi/136

















コミュニティーナースの矢田さんと初対面です。とてもパワフルで素敵な方でした。
矢田さんは雲南市病院の職員でもあります。彼女は市民活動を支えるNPOおっちラボの代表です。幸雲南塾からおっちラボが生まれそこから、現在はさらにコミュニティナースPJが立ち上がっています。

幸雲南塾
http://co-unnanjyuku.com/
おっちラボ
http://occhilabo.com/
コミュニティナースPJ
http://community-nurse.com/

私はビジネスにできないものは、いくらいいことであっても結局はまちにとって不要だと考えています。助成金だけに頼ったまちづくりをすると助成金に合わせた内容のものしかできません。自分たちの欲しいものを自分たちで作ることは本当に自由で、そこに本当に必要なものしか残りません。

いいことをやっているのに助成金がないから。。。というのは違うと考えています。その点、ちゃんとビジネスにしている矢田さんの活動は素晴らしいと思いました。




夜は懇親会に参加させていただきました。
その時にでた甘いお醤油がとても印象的でした。

病院ボランティアの方と一年ぶりの再会ができて本当に嬉しかったです。様々な考え方を学ばせていただきました。


本当に一日バタバタでしたが、密度の濃い一日を過ごすことができました。
百聞は一見にしかずですね。多くの学びを得ることができました。

最後ですが、この企画をしてくれた地域医療を育てる会の相京さん、そして院長をはじめ病院スタッフの方、ボランティアのみなさんには多くのご配慮をいただきまして本当に感謝です。ありがとうございました。


2017年9月25日月曜日

障がいって?


医桜主催「地域医療をしっかり勉強する会」の第16回は「障がいと地域包括ケア」でした。今回のゲストスピーカーは成澤俊輔(NPO法人FDA 代表理事)さんでした。
地域包括ケアにおいてマイノリティである障がい者を私たちはどう考えて行くべきか、そんなことがとても気になってこのテーマを提案したら、医桜の溝口さんが彼を紹介してくれました。

彼の話は圧巻でした。彼のTEDの動画です。話の根幹は同じなので、この動画をみてもらうのがいいと思います。


彼は自分でちゃんと自分と向き合い「今」を生きている人だと思いました。だからこそ障がい者ではなく障がいという個性を持った成澤さんなのです。
プレゼンの中で医療者や支援を仕事とする人は目的と手段を逆にしてしまっているという言葉がありました。その通りです。

「点字を覚えるといいよ」「白杖を使うといいよ」「パソコンが使えるといいよ」
それは間違いではないけれど、彼が欲しかったのは杖をついて出かける場所がないことや点字を覚えてやり取りする人がいないことなどの方が問題だったのです。
そんな彼に「点字を覚えるといいよ」はある種、傷つく言葉だったのではないでしょうか。その時の彼にとっては自分の将来などの方がずっと大事なはずです。

目が見えなくなる不安。。。両親・友達はずっと自分の側にいてくれるのだろうか?自分は社会の中で生きていけるのだろうか?究極は自分は本当に愛されているのだろうか?決してこれは障がい者だけではなく、人であれば誰でも思う感情です。

しかし医療者は悪意を持ってそんなことを言ったのではなく、彼の将来のためにできることを教えてくれていると思います。でもその思いは相手の状況においては受け取れる時と受け取れない時があることを理解しておく必要があると思います。アドバイスしても問題解決になっていないからといってそれらの方法を伝えないことではなく、もう一歩深い部分に耳を傾ける必要があるのです。

社会の中でマイノリティの人たちがいつも悩むことは、「どんな自分であっても愛されたい」という人なら誰でももつ感情からくる不安です。その「愛されたいという自分」が障がいによって「自分」を揺がすのです。この感情はや病気、老いと言った健康を害するものであっても近い状況になると思います。障がいをもつ彼が悩んだ将来に対する絶望、健常に対する嫉妬などは今回語られませんでしたが、どん底まで行き着かないとあの力強さ、明るさは出ないと思います。

彼はどん底まで落ちた自分の心にちゃんと向き合ったからこそ、「働くこと」や「社会との繋がり」の本質が見えており、その結果、今のNPO法人FDA(Future Dream Achievement)があるのだと思います。

この会社は障がい者就労支援をしているのですが、このNPO法人は助成金に頼らず、ビジネスとしてマネタイズすることができています。もちろん楽ではないと思いますが、障がい者を弱者として考えるのではなく、その人のできる能力と仕事をマッチングさせています。成澤さんの言った一言「自分たちは障害者総合支援法が明日なくなっても困りません」驚きとともに尊敬しました。

法律や制度は組織や人を規定してしまいます。しかし、人はみんな同じではありません。これまで経済が成長してきた時代は制度を拡充する形でその凸凹を埋めようとしてきました。それも限界にきている今、制度におんぶに抱っこはやめるべきと私は考えています。そのような考えの中、障がいを持っていても社会と繋がっていける良い事例だと思います。いつか実際にFDAの会社見学に行こう考えています。

社会と繋がること、集団の中で生きることを改めて考えることができました。このような話を聞ける機会に恵まれたことに感謝です。ありがとうございました。

2017年9月11日月曜日

「いつまでも美味しく食べられる街をつくるクッキングセミナー」に参加してきました

コンビニの幕内弁当がちらし寿司に早変わり。

三鷹の嚥下と栄養を考える会の「いつまでも美味しく食べられる街をつくるクッキングセミナー」で調理実習をしてきました! 
とても楽しかったです。

上の写真が元の幕内弁当で、下が調理自習で出来上がったものです。
追加で使った食材は卵1個と豆腐、しいたけ、ほうれん草のおひたしだけです。
卵と豆腐は茶碗蒸しになりました。
調味料は酢、砂糖、塩、だしの素、醤油です。
普段、ほとんど料理をしない私ですが、準備されたものがあれば私もそれなりに作ります(笑)


介護食とか嚥下食などはあまり詳しくないので、今回の調理実習は本当に勉強になりました。とろみ材やゲル化材ってたくさんあって、それぞれに特徴があるので知ることって本当に大事だと思いました。


またミキサーを使った嚥下食も初めて体験しました。

(コンビニパンのフレンチトーストをミキサーにかけてプリンにするところ)

(シチューもどき・・)


今回、色々と体験させていただいて本当に勉強になりました。改めて食べることを考えさせてくれました。

私はあまり食には関心が薄いタイプだと思っています。そう思うのは周りに食べることが好きな人が多くいるため、彼・彼女らをみていると自分はあまりこだわりはないと感じてしまうのかもしれません。それでも食べる時間が変則的だったり、外食が多くてもある程度バランスを考えて自分の健康管理はしています。

その私が、ドロドロの嚥下食を食べた時に感じたことは「毎日これは辛いだろうな」です。ハンバーグをミキサーで撹拌してゲル化材を入れて成型しなおしました。もしかしたら自分で初めから作ったハンバーグだったら違うのかもしれませんが、レトルトのハンバーグの大味が目立っていまいち食欲が湧きませんでした。また食感って本当に大事で、ある程度ご飯もつぶがあるから美味しいのだということもわかりました。

( ゲル化剤でかためたハンバーグに焼き色をバーナーでつけてみました)

味は大味でも見た目を少し変えるとまだ食べられるのですが、介護の現場ではただ作業のように食事が出されて終わりなんてことも聞きました。

今回は香辛料はほとんど使わなかったのですが、コショウやクミン(カレースパイス)なども食欲が出るものを使うことをすると違うのでしょうが、きっと現場ではそんな気遣いもなくドロドロのものとかをただひたすら与えられているのでしょう。そのつらさが理解できたように思います。調理を実際にしてみてわかるのですが、確かにミキサーにかけたり、固めるために熱を加えたり、冷やしたりなど手間がかかります。その手間を惜しんで食事だからと言って口の中に食べ物を押し込まれる苦痛。介護職がよくないといっているのではなく、効率ばかり追い求めている経営者がよくない。

一年365日朝昼晩、食事をしなくてはなりません。生きるためには栄養をとり続けなければならないのです。それがずっと苦痛になるというのは、食に疎い私ですら想像するに易いです。

「いつまでも食べられる」というのは、どういうことなんだろうか。しばらく考えてみたいと思っています。

脱マニュアルはまだまだ


私が住んでいるマンションでは毎年防災訓練以外に発災時の連絡係の説明会をします。当マンションの連絡係は各フロアごとの安否確認をし、ブロックごとにまとめて本部に連絡をする役割があります。この連絡係は毎年変わっていくため毎年説明会をしています。やり方などは各マンション色々だと思うのですが、それを周知して本当に災害が起こった時にちゃんと機能させるというのはきっとどこも苦労していると思います。

災害時は、ある程度事前に想定していてもうまくいくかどうかは全くわかりません。しかし準備はしなくてはなりません。そこにあるのがマニュアルです。

今回説明会をしていて思ったのは、説明会にきてくれる人は本当に真面目で一生懸命な人なんだと思いました。質問を聞いていると着実に与えられた役割を果たそうとしているのだと思いました。

他にも「○○の方が効率的ではないか?」などの意見も出てきました。
しかし平常時と違い、どんなことが起こるか全く予想がつかないので必ずしもそれが可能かどうかはわからないのが災害時です。マニュアルにないこともしなくてはならないことも想像されます。

さらに出てきた質問を聞いてると、そもそも当マンションが発災時にどのようなことが想定されて、どのような資源があるのかということがわかっていません。でも仕方ないと思います。私も災害協力隊の役員をやるまでは同じ状況でした。しかも説明会や防災訓練すら参加したことのない人もたくさんいます。そうなると、小さなことですがマニュアルや看板の表記をわかりやすくすることなどをするのが精一杯の現状です。

脱マニュアルはまだまだ時間がかかりそうです。それでもちっちゃなことからコツコツとやっていきます。

2017年9月6日水曜日

若い人からみた介護保険


勉強会をしようという話のきっかけは、最近介護保険に関する引き合いも増えてきたとのことで、この会は普段、がんに関わる保険や保障を研究する会なのですが、公的な介護保険制度に関しても理解を深めようという話になりました。
そこで今回は私から介護保険制度について地域包括ケアも含めた形でお話をさせてもらいました。

参加されたみなさんは、20代〜40代なので介護保険についてはこれまであまり関心がなかったそうです。そして介護保険がスタートした時も当然もっと若いので、一体どんな保険なのかこれまでよくわからなかったという意見がほとんどでした。特に彼らは医療保険に関してはかなり勉強しているのですが、介護保険はわかりにくいということも話していました。もちろん私の説明が完璧ではないですが、医療保険と介護保険自体の違いが彼らの理解しづらさ繋がっていると思います。

一番印象的なのが、「医療保険も含めて日本の社会保障制度は本当に大丈夫か?」「保険として考えた時、どうなんだ?」という意見です。保険の性質を理解している彼らが「国を企業として見立てた時にこの保険制度って破綻してる」と言った一言に「じゃあこうすればいい」というものが私も見えてこない。地域包括ケアをすすめればいいという話だけでもないし、制度をいきなりドラスティックに変えるということも現状からすると難易度も高い。みんなと一緒に「うーん」って考えちゃいました。

彼らの意見は医療も介護もなんでもかんでも公的保険で賄うのでなく、公的な保険の補える範囲をしっかり決めて公的な保険を守るという考え方でした。

このメンバーはがんのサバイバーだったり、大きな怪我などで医療保険に助けられている人たちなので余計に医療費のことケアに対しての考え方なども自分なりの考えがあるな、というのは今回の勉強会とは別に思ったことです。

高齢化、人口減少社会も含めて何をすべきかはそんなにすぐに答えがでるものではありません。それでも考えるきっかけを作ることはできたかなという印象でした。

来年の3月には診療報酬・介護報酬改訂があるのでまた医療・介護に関する勉強会を実施しようと思っています。