医桜主催「地域医療をしっかり勉強する会」の第16回は「障がいと地域包括ケア」でした。今回のゲストスピーカーは成澤俊輔(NPO法人FDA 代表理事)さんでした。
地域包括ケアにおいてマイノリティである障がい者を私たちはどう考えて行くべきか、そんなことがとても気になってこのテーマを提案したら、医桜の溝口さんが彼を紹介してくれました。
彼の話は圧巻でした。彼のTEDの動画です。話の根幹は同じなので、この動画をみてもらうのがいいと思います。
彼は自分でちゃんと自分と向き合い「今」を生きている人だと思いました。だからこそ障がい者ではなく障がいという個性を持った成澤さんなのです。
プレゼンの中で医療者や支援を仕事とする人は目的と手段を逆にしてしまっているという言葉がありました。その通りです。
「点字を覚えるといいよ」「白杖を使うといいよ」「パソコンが使えるといいよ」
それは間違いではないけれど、彼が欲しかったのは杖をついて出かける場所がないことや点字を覚えてやり取りする人がいないことなどの方が問題だったのです。
そんな彼に「点字を覚えるといいよ」はある種、傷つく言葉だったのではないでしょうか。その時の彼にとっては自分の将来などの方がずっと大事なはずです。
目が見えなくなる不安。。。両親・友達はずっと自分の側にいてくれるのだろうか?自分は社会の中で生きていけるのだろうか?究極は自分は本当に愛されているのだろうか?決してこれは障がい者だけではなく、人であれば誰でも思う感情です。
しかし医療者は悪意を持ってそんなことを言ったのではなく、彼の将来のためにできることを教えてくれていると思います。でもその思いは相手の状況においては受け取れる時と受け取れない時があることを理解しておく必要があると思います。アドバイスしても問題解決になっていないからといってそれらの方法を伝えないことではなく、もう一歩深い部分に耳を傾ける必要があるのです。
社会の中でマイノリティの人たちがいつも悩むことは、「どんな自分であっても愛されたい」という人なら誰でももつ感情からくる不安です。その「愛されたいという自分」が障がいによって「自分」を揺がすのです。この感情はや病気、老いと言った健康を害するものであっても近い状況になると思います。障がいをもつ彼が悩んだ将来に対する絶望、健常に対する嫉妬などは今回語られませんでしたが、どん底まで行き着かないとあの力強さ、明るさは出ないと思います。
彼はどん底まで落ちた自分の心にちゃんと向き合ったからこそ、「働くこと」や「社会との繋がり」の本質が見えており、その結果、今のNPO法人FDA(Future Dream Achievement)があるのだと思います。
この会社は障がい者就労支援をしているのですが、このNPO法人は助成金に頼らず、ビジネスとしてマネタイズすることができています。もちろん楽ではないと思いますが、障がい者を弱者として考えるのではなく、その人のできる能力と仕事をマッチングさせています。成澤さんの言った一言「自分たちは障害者総合支援法が明日なくなっても困りません」驚きとともに尊敬しました。
法律や制度は組織や人を規定してしまいます。しかし、人はみんな同じではありません。これまで経済が成長してきた時代は制度を拡充する形でその凸凹を埋めようとしてきました。それも限界にきている今、制度におんぶに抱っこはやめるべきと私は考えています。そのような考えの中、障がいを持っていても社会と繋がっていける良い事例だと思います。いつか実際にFDAの会社見学に行こう考えています。
社会と繋がること、集団の中で生きることを改めて考えることができました。このような話を聞ける機会に恵まれたことに感謝です。ありがとうございました。
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