2016年12月13日火曜日

患者の意向を尊重した意思決定のための研修会



去る12月11日(日)9:00〜17:30、東京医療センター大会議室にて、「患者の意向を尊重した意思決定のための研修会」が実施されました。この研修会は平成28年度厚生労働省「人生の最終段階における医療供給体制整備事業」の一環として行われました。

この事業は神戸大学が主幹で実施しており、本年度は全国12ブロックで研修会を実施する事になっており、今回私が関わらせていただいたのは関東信越ブロックの研修会です。

参加人数は27施設101名でした。この研修会はとても注目度が高く、関東信越ブロックでは当初の定員の倍率も5倍くらいだったそうです。事務局の厳正な抽選で当たった方が参加していますので、参加できた方は本当にラッキーだと思います。

この事業は、人生の最終段階におけるプロセスガイドラインの普及が目的となります。

基本のスライドがありますが各地でいろいろな工夫で研修会が開かれています。私は関東信越ブロックで行われた内容をお伝えしたいと思います。

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1)イントロダクション
H28年度人生の最終段階における医療供給体制事業は、H26年、27年に実施していたようなモデル施設での実践ではなく、広くプロセスガイドラインを普及させるということを目的としてこの研修会が企画されています。本年度は12ブロックで研修会が実施されています。

2)プロセスガイドライン
人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドラインhttp://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000078981.pdf

人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン解説編

プロセスガイドラインは厚労省からH19年に出されています。(改定27年)
世間でよく見るガイドラインとは異なり、このパターンの時にはこのようにする、と言ったものではありません。下記の図にあるように大まかな俯瞰図があるだけです。



人生の最終段階における医療の選択は、元気な時にはなかなか考えることが難しく、そのため患者本人の意思がわからないままに医療が施されていることも少なくありません。
しかし、医療者も家族もみんな患者にとって良かれと思って一生懸命やっています。ところがそれは必ずしも患者自身にとって本当に良いことであるとは限りません。
それぞれの価値観が異なっていることに気づくこと、また職種間の違いもあるということなどを念頭におき、患者にとっての最善とは何かを考えていくプロセスを経ることがこのガイドラインの肝になります。


研修ではプロセスガイドラインをSTEP1~5に分けて、ポイントをそれぞれ学びます。

STEP1 患者の意思が確認できるか否か
STEP2 患者の意思が確認できる場合の患者と医療者との話し合い
STEP3 患者の意思が確認できない場合、患者の推定意思を尊重する
STEP4 患者の意思も推定意思も確認できないできない場合はみんなで話し合う
STEP5 これまでのプロセスを経ても意見がまとまらない場合は複数の専門家で構成する委員会に相談する

今回は1〜4を事例を使ったワークを交えて理解を深めました。臨床倫理の4原則(自律性尊重、与益、無危害、公正)がそれぞれの事例においてどのように当てはめるかということを考え、それぞれの倫理原則が時にコンフリクトを起こすことを学びました。

患者にとって最善を考えるということは、本人の意向と家族、医療者それぞれに違う価値観の中で話し合いつつ合意形成していくプロセスということなのです。

3)アドバンス・ケア・プランニング:ACP
基本は患者の意思を尊重するのですが、もしもの時というのは必ずしも本人の意思を確認できるわけではありません。ACPとは「今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス」のことを言います。研修会においてACPはSTEP3の患者の推定意思を尊重するために事前に医療者ともしもの時の相談をしておくことと位置づけられています。

事前の意思確認(アドバンス・ディレクティブ:AD)は必ずすれば良いというものではなく、むしろネガティブであったとう結果(The SUPPORT study)が出ています。その要因として考えられるものは患者自身がそのもしもの時の状況を予測できないことや患者がなぜその選択をしたのかがわからなかったり、代理決定者がADに関与していなかったり医療者と患者の価値観が一致しないということが挙げられています。他にも書面があったため問題が起こったりすることもあります。

ADもACPも目的は同じですがその概念は下記のようになります。



患者の意向を尊重し質の高いケアを医療者が行うためにACPは重要な手段です。そのプロセスを重視し、侵襲的ではないコミュニケーションを行うことが肝要です。
ACPは非常に難しく、本人が望まない場合においては傷つけてしまう場合があります。また、手間も時間もかかります。その反面、自己コントロール感が高まったり対話の機会が増えることからコミュニケーションが良くなることもあります。医療者はタイミングを見計らって話をすることが重要になります。またその重要な話の口火は医師が切ることが良いとされています。

研修会では話す切り出し方をロールプレイを通して、自らのスキルを確認しました。この切り出し方の引き出しを多く持つことで侵襲的ではないACPができるようになります。


4)最後に
それぞれのチームで一日を振り返りを行いました。職種間の違い、他院との違い、研修の内容だけではなく、いろいろと感じたことがあったと思います。それを言語化することを行いました。


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今回の研修会は私自身も学ばせていただく部分が多く、関わらせていただけたことに本当に感謝の気持ちでいっぱいです。倫理サポートチームの仕事だけではなく、その他の活動においても生かしていきたいと思っています。

本当にありがとうございました。

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