がんの保障勉強会に参加して来ました。民間の保険を売っている方々が中心の勉強会なのですが、がんにまつわる保障を公的・民間の両方の情報をを患者さんに提供するという目的を持った集まりです。私はどっぷり医療側の勉強ばかりしているので、ここでは民間保険や一般の方の考え方などを学ばせてもらっています。
今回は一般社団法人日本がん医療翻訳アソシエイツの野中希さんにお話を聞かせていただきました。この団体は、米国を中心とする癌医療関連の先端情報を、有志の医療翻訳者・監修者の協力のもと、読みやすい日本語に翻訳・編集し、ウェブサイトなどで情報発信している非営利型の一般社団法人です。
一般社団法人日本がん医療翻訳アソシエイツ
野中さんから翻訳事業から見た日本のがん情報について、我が国は患者ががん治療について正しい知識や情報を得難いということのご指摘がありました。
肺がんのインターネットで検索できる情報を日米で比較したところ、日本は信頼できる情報が上位に上がって来ず、明らかに質の違いがあったというものです。
2009年の調査結果ですが、現在でも正しい情報が必ずしも上位に上がって来ない現状からするとあまり大きな違いはないと考えられます。そのためがん治療の情報を患者がインターネット上で得ようとすると英語論文を読まなくてはなりません。
この話を伺って、日本はなぜ正しい情報にたどり着けないのかということを考えてみました。その理由の一つは、我が国の患者がこれまで治療に対して医師任せであったところが大きいのではないでしょうか。そしてそこにあるのが薬機法の広告規制にも関係するのではないかと思います。
今でこそ本人へのがんの告知が当たり前となってきていますが、昔はがんと告知されると生きる希望を失う人が多いので知らせないということが普通でした。そのような背景がある中、医薬品の情報が患者に届かないようにという規制がされてきました。
私がMRだった時に病棟訪問が禁止となった理由の一つに病棟で抗がん剤の説明をMRがすると製品名を聞いた患者が自分の使っている薬の名前を見て自分ががんであることを知ってしまうから、というのがありました。私が若い頃は医学的に詳しい本も薬の一覧も一般の書店では全く手に入れることはできませんでした。
それに対してアメリカでは広告規制はなく、製品名をテレビコマーシャルすることも可能です。また患者自身が自分の治療の選択も委ねられている、またはそうせざるを得ない?という違いがあります。そうなると必然的に情報入手についても差が出るのは当然だと考えます。
そうはいっても我が国の告知に対する考えも、インターネットの発展もあり、正しい情報が入手できないというのは患者知る権利と患者の安全という面からこの広告規制を見直す時期にきているのではないかと私は考えます。
奇しくもディオバン問題において薬機法の広告規制が問題になりました。患者の知るべき情報と広告の区別ってどうあるべきなんでしょう。プロモーションと医薬品の正しい情報。アカデミックな情報はどう扱うべきなのか、そして研究と患者の権利。
考えなくてはいけないことがたくさんですね。
他にも研究開発に関する問題も話題に上がり、いろいろと勉強になりました。
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