2017年5月15日月曜日

プライマリ・ケア連合学会①「ポリファーマシー」



週末はプライマリ・ケア連合学会学術大会に参加してきました。参加したシンポジウム等の振り返りしたいと思います。ひとつめはポリファーマーシーについてのシンポジウムです。

登壇者は以下の通りです。

【不適切な多剤処方・ポリファーマシーは「薬」の罪?】

座長:   野呂瀬崇彦(北海道薬科大学 薬学教育分野)
      西村 真紀(高知大学医学部家庭医療学講座)
企画責任者:瀬川 正昭(こやだいら薬局/徳島文理大学薬学部)
      川上 和徳(綾川町国民健康保険陶病院)
不適切な多剤処方・ポリファーマシーは「薬」の罪?
      徳田 安春(臨床研修病院群プロジェクトむりぶし沖縄センター)
多職種連携・地域連携で患者中心のポリファーマシーに取り組もう
      宮田 靖志(愛知医科大学 地域医療教育学寄附講座・医学教育センター)
ポリファーマシーで見落としがちな視点と『残薬の見える化』を通じたこれからの地域連携
      佐藤 一生(北海道ファーマライズ株式会社 ひまわり薬局)


ポリファーマシーとは多剤が併用されている状態を言います。4〜6錠以上処方されていることをさすこともあります。このこと自体は状態を示しているので良いも悪いもないのです。問題になるのは「適切な処方をされていないで多剤併用になっている」ことなのです。不適切な処方とは、副作用発現に対して薬剤で対処して薬剤が増えるとか、他院からの処方に気づかずに漫然と薬が増えるなどのことを言います。

その問題となっている「適切な処方をされていないで多剤併用になっている」のは処方をする医師と薬剤師の連携の問題です。医師、薬剤師、それぞれの強みが違うということでそれぞれの弱みを補完して適切な処方が行われればいいのですが、そこができていません。

ポリファーマシーとなりがちなのは高齢者です。彼らはポリファーマシーの前にマルチモビリティ(多くの疾患を抱えている)であることを理解した適切な薬剤の用法用量、剤型選択がなされなくてはなりません。そこからも意図するベネフィットが得られる処方が本当にできているかを確認しなくてはなりません。このマルチモビリティの状態は多くのエビデンスがそのまま適応できません。何故ならば臨床試験となる集団はベースラインを整えられており、同じ結果が目の前の患者で得られない可能性があるのです。

また処方する側の問題として、「薬を減らしてしまって何かイベントが起こってしまったら患者からクレームが入るのではないか」という恐れから処方してしまっている場合もあります。薬剤選択をする時にも患者とどのような治療の意思決定プロセスだったかもとても大切なことです。患者の自律と医師の不安。これも突き詰めて考える必要があると思います。

よくポリファーマシー=残薬と考える人がいますが、正確にはポリファーマシーの中でも不適切な処方によって起こる一つの表出された問題です。それは残薬が起こる原因は多剤だけではないからです。例えば薬を使うのが勿体無いという理由で残しておいた、もしくはあまり服用間隔を伸ばしたというのは本人の経済的観念からです。そう考えると患者の生活状況や治療に対する考え方なども踏まえて治療方針、薬剤選択をしないと残薬が起こってしまうということになります。

今回のシンポジウムは医師・薬剤師との連携だけではなく、どのように患者と意思決定をするかというところまでの話がされており、非常に聞き応えのあるシンポジウムだったと思います。

単純に社会保障費を減らすためにポリファーマシー問題を解決する必要があると言われる方がいますが表層の問題解決だけをしても他の問題が出てくるだけです。真の課題を発見し、その事象を解決することを目指すべきと私は考えます。

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