2018年12月31日月曜日
2018年大変お世話になりました
2018年もまもなく一年を終えようとしています。
多くの方にご支援を賜り、何とかここまできております。
今年は一年の経過があっというまで、自分は何をしているのかよくわからず目の前にあることだけをしてきたように思います。
後半は体調の良くない日が多く、大好きなあっちこっちもできず、そのためブログなどの更新も滞りがちでした。来年はもう少し文章など形にしていく作業をふやせればと考えています。
来年の抱負は年明けにして、今日は今年の感謝までとしたいと思います。
ありがとうございました。
2018年11月26日月曜日
免疫療法ってなんだ⁉~夢のクスリの勘違い
11月7日にがんの保障研究会で、日本医科大学の勝俣範之先生をお呼びして「免疫療法ってなんだ⁉~夢のクスリの勘違い」をタイトルにした講演・シンポジウムを実施しました。
ただ、この受賞決定をきっかけに現在一部民間医療機関で行われている自由診療での「免疫療法」などまでがノーベル賞をとった夢の薬という誤解が広まり、実際に国立がんセンターや患者団体に問い合わせが多数ありました。一般の方にとって「免疫」という言葉で全てが一括りにされて理解され、インターネットという情報の海で「正しい情報」と「誤った情報」が混在しているのが現状です。
免疫療法は臨床試験を経て効果が立証されているもの(免疫チェックポイント阻害剤など)と、効果が立証されていないもの(臨床試験で結果がでていないもの)がありますが、その違いを理解できないというものがあったり、ある一つのがんに効けばそれ以外にも効果がある可能性があると思ってしまいます。それに賭けてみたくなる気持ちも、わからなくはありません。その患者さんの「治りたい」という思いを利用している人が世の中にいるのも現実です。また悪意を持っていなくても、間違った知識を善意で広めてしまうこともあります。
そこで一般の方へ正しい情報を伝えるために、NEWS ZEROやNHKに出演された勝俣範之先生に、腫瘍内科医という専門家の立場から科学的根拠のある免疫療法は限定的であるということ、インターネットの広告などに出てくる情報には経済的と医療リスクがあるという話をして頂きました。
今回は当初、保険を扱う保険会社職員及び保険代理店従業員の方を中心に企画をいたしましたが、急遽、一般の方にも参加していただき広くこの問題点を伝えることにしたため、運営はギリギリまでバタバタ状態でした。
それでも来ていただいた方々に聞いてよかったということを言っていただくとその苦労が少し和らぐ気がします。
2018年11月2日金曜日
人生の最終段階における医療
終わった、終わった。ホント、これが終わるとほっとします。
この研修会の運営にかかわらせていただいてこれで3期目です。やっとなんとか色々と細かいところに目を行くようになりました。参加者も多いし、かかわる人も多く苦労が絶えません。
運営の話はさておき、今年の関東信越ブロックは千葉(慈恵大柏看護学校)と東京(国立病院機構本部)の2会場での開催でした。
この研修会で学ぶ「人生の最終段階における医療の決定プロセスに関するガイドライン」って人生の最終段階に関わる人みんなが実践できるようにならないといけないんですよね。参加した人が実践して、そのことを周りに浸透させていかなければならないこと。そしてよーく考えるとこの研修会に参加できた人って世の中の医療者の数パーセントにも満たない現実。
この事業の一端にいるだけなので今後の展開については様子を見守っていますが、少しでも現場に変化が生まれることを心から願ってやみません。
一般公開用研修会資料
https://square.umin.ac.jp/endoflife/shiryo/shiryo.html
2018年10月6日土曜日
ティール組織ってなんだ
台風が接近している日曜日。
「講演動画上映会&ダイアログ~自分たちの新しい組織を対話する~」に参加してきました。久々の一参加者としてのワークショップ参加は楽しかったです。場をつくっていただいている方へは本当に感謝です。
先日、自分で読書会を企画しましたが、ほかの人との対話を通して理解を深めたいと思って参加しました。
今回上映された動画はこちら
「『Reinventing Organizations』(日本語版『ティール組織』)著者フレデリック・ラルー スピーチ」
ティール組織は出版されてすぐに読んだのですが、事例が中心であまり概念化までしている内容でなかったのでちょっと読みにくかった印象があります。講演の動画の時間は長いのですが、読むよりは楽なのではないかなと思います。
ティール組織
本ではティールは進化型とされています。
上司がおらず、自律的でフラットな組織というのが特徴です。
著者のフレデリック・ラルー氏がいくつもの組織を見てきた中で成功している組織の共通点をみつけて概念化しているモデルです。社会構造の変化からそこで行われる人々の活動の形態がどう進化してきたかを整理しています。事例が紹介されていますが、組織の大きさなどはあまり関係はないようです。
またティール以前のレッドやオレンジを否定しているわけでないと書かれています。
本を読んだり、ワークショップに参加して思ったことは、ティールは万能ではないということです。また組織は環境によって戦略を変えるものであることから、どのような環境にその組織が置かれているかに依存するのだと思います。
しかし、ティールがこれだけ色々な人に注目されるというのは、今の組織に対して何らかの問題や不満を抱えているということもいえるのではないでしょうか。そして環境変化に敏感に対応しなくてはならない組織は、ティール組織を作ろうとしてではなく、自然とティールのようになってるとこもあります。
この本の限界は沢山の事例からの共通点を探ったところまでということです。本質の部分までには辿りつけていません。それはこれからということなのかもしれません。
ティールはこれまでのリーダーシップ論や組織管理論などの概念を超えており、環境変化への対応、社員の自律などを考える時のきっかけになりそうです。まだそうだとはっきりはいえませんが、オートポイエーシス論で説明がつきそうだと感じています。
まだまだ自分が勉強中なのでこのくらいにしておきます。
2018年9月28日金曜日
「患者協働」の医学・薬学研究と医療の創造
9月15日に第62回日本薬学会関東支部大会のランチョンセミナーの企画のお手伝いをしてきました。実務薬学総合研究所株式会社の水さんの企画です。演者は患者協働の医療を推進する会でもお世話になっている、一般社団法人ペイシェントフッドの宿野部さんです。私は最後のパネルディスカッションで参入しました。
水さんが薬剤師の意識を変えるきっかけを作りたいということで企画がスタートしました。薬剤師の興味は薬のみに行きがちで患者の生活や価値観というものに思いを馳せることはあまり得意ではないようです。しかしそのような思考でいると患者は薬を飲まないことをあたかも薬を飲まない患者が悪いように考えてしまいます。
宿野部さんの話は、ご自身が腎臓が悪く透析をしており、幼少の頃から薬の世話になっていることから様々な思いを持っています。
病との戦いの中には薬は欠かすことはできず、薬の副作用も当然経験しています。生きていくためには薬のない生活はあり得ません。自分で自分の病気のことを知ろうとすると患者が規制の壁で情報入手が難しい状況が今の日本です。
「プロモーション」と「患者が知りたい情報を渡すこと」
この線引きは非常に曖昧です。
すぐに何かできるわけではありませんが、患者からみてココはおかしいを発信することは大事なことだと思っています。その発信の仕方は単なる権利の主張ではなく、セルフマネジメントをするための主張をしていかなくてはなりません。
今後もこう言った活動を応援していこうと思っています。
このロボットはSOTAといいます。
ペッパーよりも小さく、おしゃべりもしてくれるのでイベントの時にあると場が和みます。
2018年8月31日金曜日
人工知能は人間の何?
またまたブログ更新が滞っておりました。なんだか文章を書く気になれなくて、ぼーっとしていました。振り返ってみると人工知能関連のイベントに参加することが多かったのでそれに関連したことを書こうと思います。
人間の仕事をAIにとられるんじゃないかという人がいますが、実際はそんなことはないと私は思っています。確かに置き換わる部分は必ずあると思います。しかし全部置き換わることはまずありません。過去の技術革新の歴史をみても、新規技術によって人の仕事が本当になくなった試しはありません。違う仕事が発生して必ずなにか仕事をしています。人数が減ることはあってもゼロにはならず、不要になった労働者はまた別の仕事をしています。でも、もし仮に人工知能が人間の仕事を全部代わりにできるとしたら、そのとき人間は一体何をするのでしょう。人間は幸せになれるのでしょうか。
人工知能に関連するイベントにいくつか参加した中のある研究プロジェクトにおいて、縮尺1:1:1のマップを作ることを目指しているというものがありました。これを実現させるためには、ありとあらゆる場所で撮影した画像情報を組み合わせてたVRで作るのですが、大量のデータを取得とそれを処理するコンピューターで演算をしなくてはなりません。なんかほとんど攻殻機動隊とかの話になりそうです。
人工知能だけではなく、IoTなどの技術革新による変化は止めようがなく、だからこそ、人は何をすべきか、人とは何かを考えなくてはいけないのだなと感じているのです。
まだしばらく考えていそうです。
まだしばらく考えていそうです。
写真は産総研に飾ってあった機械たちです。
2018年7月11日水曜日
北原リハビリテーション病院に見学にいってきました
北原リハビリテーション病院見学のために八王子までやってきました!
京王八王子駅からタクシーで15分くらいの場所で、小高い丘の上なので坂がちょっと大変でした。
しかし、坂を上ると、「ここ、ホテル??」と見間違うような病院が目の前に現れます。
エントランスホールもホテルのロビーのようです。
新しいというものあるのですが、照明、壁紙、どれをとっても病院っぽくありません。
まず病院の概略をお話いただきました。通された会議室はここ↓です。
北原リハビリテーション病院は、北原国際病院の関連病院です。北原国際病院は脳外科に強みをもつ急性期病院(7:1)で、救急も受け入れています。他関連施設に、北原ライフサポートクリニック、北原RDクリニック、北原ライフサポートクリニック東松山があります。
北原リハビリテーション病院の特徴は以下の5つです。
・脳卒中のゴールデンタイムに徹底したリハビリテーション
・レストランで「免疫力が高まる贅沢おうちご飯」を
・リハビリテーションで疲れた体をいやす「森の中の温泉」
・病院のイメージを変えるホテル仕様の空間
・退院後の人生をサポートする「北原トータルライフサポート倶楽部」
入院3日目から外出訓練や自費(選定療養費)でのリハなどを徹底して行い通常3か月の入院を1か月で退院できるようにするというのは凄いです。
寝せっぱなしにさせないのがいいですね。
診療報酬の上限=患者にとってよいリハビリテーションの時間というわけではありません。生活の課題をちゃんと見据えたうえでの必要なリハビリというのは、よいことだと思います。
その工夫に食事や空間の演出が非常に勉強になります。
食事はみんなレストランに下りて取ります。そして車いすから椅子に座り食事します。事前にメニューも選択が可能です。
食材はオーガニックにこだわっているそうです。ビールもOKって嬉しいですね。
SPAも隣の建物にあります。
本当にSPA好きにはたまらない癒しの空間です。温泉も本当に掘ったみたいです。。
病棟もホテルのようです。個室は4点柵は使っていません。壁の酸素も壁紙の色にあわせて塗ってあります。
病棟のトイレも一つ一つ違っています。このこだわりっぷりは凄い。
歩行測定器です。これで歩き方のデータをとっています。
通常の訓練だけでなく、料理をすることも訓練の中に取り入れており、そのためのキッチンがこちら。
もうほんとに北原先生のこだわりが満載です。
植物はいたるところにあり、全部本物です。
システムも完全に一歩以上先を行っています。全員がスマホをもっており、カルテ記入、オーダー、ナースコールもスマホです。そして極めつけがナースステーションにほとんどモノがない。そして狭い。つまり内勤業務よりも患者さんとの時間をとりなさいということなのです。
病棟へ上がるには顔認証です。スタッフと患者さんのみが登録されており、ご家族は病棟には上がれません。家族との面会は1Fのフロアのみです。
これだけしっかりとしたコンセプトで作られている病院は見たことがありません。綺麗な建物に目を奪われがちですが、リハビリテーションへのこだわりが細部にみられ、システムの導入も「使う」ということをしっかり考えられています。
八王子という立地だからできることなのか?八王子の中でのエコシステムだけを考えているわけではなさそうです。
今の診療報酬の枠なかで効率だけを追い求めた医療施設が多いのが現実ですが、見学にいって生活や癒しとは何かということを改めて考えることができました。しかし患者側がこういった病院をどう感じるのか、そこが知りたいところです。
今後の展開がとても楽しみです。
果樹園、ワイナリー、牧場、農場なども作っていきたいと考えているそうです。。。
2018年7月9日月曜日
ヘルスケアシステムを紐解くワークショップ in沼津
7月7日七夕の日に沼津市のプラザヴェルデにて、F-met+(沼津で活動する、ものづくり技術を医療・介護現場に還元する団体)主催、BMIAヘルスケア分科会共催でヘルスケアシステムを紐解くワークショップin 沼津を開催しました。
会場のプラザヴェルデは駅からとても近く、とても綺麗なところでした。
参加してくださったのはF-met+の方以外に医療者の方、行政の方、地域活動をされている方などで、バランスよく様々な立場の方に集まっていただきました。
西日本地区の雨がとんでもないことになっていますが、関東も前日まで雨が降っていたことから沼津もその影響がでるのではと心配していましたが、当日はお天気ににも恵まれました。
私は今回もメインファシリテーターをさせていただきました。
今回は、これまでに何回か実施した内容を短くしつつ、かつ沼津にフォーカスするというものでした。基本的にこのシリーズは俯瞰する視点が大きなテーマなので、どこまで地域に落としていけるかなと、若干の不安はあったものの、そこはこの地域に居住している方や勤務されている方々でしたので心配するほどではありませんでした。
現在の社会保障制度の歴史や地域医療計画の沼津市の状況などをざっくり見てもらいながら、皆さんが感じていることを共有していただき、さらにsociety5.0を紹介することで、「今」を考えてもらうものです。
立場の違うと視点が違うので、出てくる意見が違います。やはり社会保障制度関連のことは医療・介護と密接なので医療者はよくご存じです。しかし一般市民は制度のことはあまり意識していなかったりします。それだけ今の医療制度って当たり前に捉えているのだと思います。そして医療って本当に必要なときにならないと意識しないので、実感するのお難しい。だからもっとテーマを絞って、ゆっくりダイアログしたいなーというのが私の一番の感想です。
それでもそれなりに何か感じて持ち帰っていただけたのではないかと思います。
こういった場を今後もつくっていきたいと思います。
2018年6月30日土曜日
ポリファーマシー対策は進んでいるか?
プライマリ・ケア連合学会で参加したシンポジウムの感想を書こうと思います。
昨年のプライマリ・ケア連合学会でもポリファーマシーは取り上げられていました。
昨年の記事(プライマリ・ケア連合学会①「ポリファーマシー」)
今年はさらにポリファーマシー対策に薬剤師の活躍の話が聞けました。
今回の登壇者は以下のとおりです。
【シンポジウム10 ポリファーマシー対策は進んでいるか?~現場での取り組みと課題~】
座長: 宮田靖志(愛知医科大学 地域医療教育学寄付講座)
八田重雄(医療法人社団家族の森 多摩ファミリークリニック)
企画責任者:宮田靖志(愛知医科大学 地域医療教育学寄付講座)
・病院勤務の薬剤師と医師・歯科医師が行うポリファーマシー対策
仲井培雄(医療法人団和楽仁芳珠記念病院)
・病院が主導するポリファーマシー是正
吉岡陸展(宝塚市立病院 薬剤部)
・診察室から地域へ ーまず自ら行動することに意義がある
福士元春(武蔵国分寺公園クリニック)
・ポリファーマシー対策 -診療所薬剤師による処方提案と医薬連携
八田重雄(医療法人社団家族の森 多摩ファミリークリニック)
芳珠記念病院のNST(栄養サポートチーム)は一般的なNSTとFST(摂食嚥下サポートチーム)と褥瘡対策チームを合わせたチーム活動をしています。そのチームがラウンドをしているときに気づいたポリファーマシーの現状に対して、入院中に医師と薬剤師が中心となり薬剤を整理し、退院時の退院支援として処方提案をするということをしています。その結果を地域医療機関に発信するということも行っています。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000176442.pdf
宝塚市立病院の取り組みも入院をきっかけとして薬剤を整理して地域へ戻すということを行っていました。
患者が複数の診療科にかかっていることは珍しいことはなく、お薬手帳もちゃんと活用できている人も少ないのが現状です。この2つの事例から、急性期に入院することは薬を整理するよい機会だと改めて思いました。
しかし退院後も薬をまとめて管理ができるかという点において、まだまだ課題は残っていそうです。患者が自分の行きたい医療機関に通ってしまったら元に戻ってしまいます。また、医療機関の医師が自分の使いたい薬を処方しても元に戻ってしまいます。これは地域連携の大きな課題だと思います。医師⇔薬剤師の関係性の話だけではないですね。
また、在宅医療側から武蔵国分寺公園クリニックと多摩ファミリークリニックの事例がありました。武蔵国分寺公園クリニックではEBMの実践の中で薬をできるだけ出さない取り組みの話でした。多摩ファミリークリニックの話はクリニックに入職している薬剤師が在宅医療の中で病院や他医療機関と連携を取りながら薬の管理をしているとのことです。
今回のシンポジウムを聞いて、カルテやレセプトはオンラインでつなぐべきだと改めて思いました。もちろんそれだけで解決することはないかと思いますが、少なくとも重複した薬が出されることがなくなります。また相互作用のチェックも容易になります。
昨年のシンポジウムから、薬剤師がただ残薬の整理・管理する役割から薬をとおした連携に一役買うようになってきているという変化を感じました。発表を聞いていた医師からも質問もどうやったら薬剤師とうまくやれるのかというものがありました。それだけ薬剤師の能力に対して期待が増えてきている表れだと思います。
まだまだ、ここまで出来ているところは少ないと思いますが、変革の臨界点はそこまできているのでしょうね。
昨年のプライマリ・ケア連合学会でもポリファーマシーは取り上げられていました。
昨年の記事(プライマリ・ケア連合学会①「ポリファーマシー」)
今年はさらにポリファーマシー対策に薬剤師の活躍の話が聞けました。
今回の登壇者は以下のとおりです。
【シンポジウム10 ポリファーマシー対策は進んでいるか?~現場での取り組みと課題~】
座長: 宮田靖志(愛知医科大学 地域医療教育学寄付講座)
八田重雄(医療法人社団家族の森 多摩ファミリークリニック)
企画責任者:宮田靖志(愛知医科大学 地域医療教育学寄付講座)
・病院勤務の薬剤師と医師・歯科医師が行うポリファーマシー対策
仲井培雄(医療法人団和楽仁芳珠記念病院)
・病院が主導するポリファーマシー是正
吉岡陸展(宝塚市立病院 薬剤部)
・診察室から地域へ ーまず自ら行動することに意義がある
福士元春(武蔵国分寺公園クリニック)
・ポリファーマシー対策 -診療所薬剤師による処方提案と医薬連携
八田重雄(医療法人社団家族の森 多摩ファミリークリニック)
芳珠記念病院のNST(栄養サポートチーム)は一般的なNSTとFST(摂食嚥下サポートチーム)と褥瘡対策チームを合わせたチーム活動をしています。そのチームがラウンドをしているときに気づいたポリファーマシーの現状に対して、入院中に医師と薬剤師が中心となり薬剤を整理し、退院時の退院支援として処方提案をするということをしています。その結果を地域医療機関に発信するということも行っています。
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-11121000-Iyakushokuhinkyoku-Soumuka/0000176442.pdf
宝塚市立病院の取り組みも入院をきっかけとして薬剤を整理して地域へ戻すということを行っていました。
患者が複数の診療科にかかっていることは珍しいことはなく、お薬手帳もちゃんと活用できている人も少ないのが現状です。この2つの事例から、急性期に入院することは薬を整理するよい機会だと改めて思いました。
しかし退院後も薬をまとめて管理ができるかという点において、まだまだ課題は残っていそうです。患者が自分の行きたい医療機関に通ってしまったら元に戻ってしまいます。また、医療機関の医師が自分の使いたい薬を処方しても元に戻ってしまいます。これは地域連携の大きな課題だと思います。医師⇔薬剤師の関係性の話だけではないですね。
また、在宅医療側から武蔵国分寺公園クリニックと多摩ファミリークリニックの事例がありました。武蔵国分寺公園クリニックではEBMの実践の中で薬をできるだけ出さない取り組みの話でした。多摩ファミリークリニックの話はクリニックに入職している薬剤師が在宅医療の中で病院や他医療機関と連携を取りながら薬の管理をしているとのことです。
今回のシンポジウムを聞いて、カルテやレセプトはオンラインでつなぐべきだと改めて思いました。もちろんそれだけで解決することはないかと思いますが、少なくとも重複した薬が出されることがなくなります。また相互作用のチェックも容易になります。
昨年のシンポジウムから、薬剤師がただ残薬の整理・管理する役割から薬をとおした連携に一役買うようになってきているという変化を感じました。発表を聞いていた医師からも質問もどうやったら薬剤師とうまくやれるのかというものがありました。それだけ薬剤師の能力に対して期待が増えてきている表れだと思います。
まだまだ、ここまで出来ているところは少ないと思いますが、変革の臨界点はそこまできているのでしょうね。
2018年6月19日火曜日
プライマリ・ケア連合学会in津
津に行ってきました。
実家のある名古屋から1時間くらいところなのですが、地方都市で1時間は遠いところです。そのため駅を降りたのは初めてでした。
朝のお散歩しにいったのは三重県護国神社と四天王寺です。
今回の学会は自分の発表もありましたが、興味のあるテーマがたくさんあって、聞きにいけなかったものがいくつもありました。
第9回日本プライマリ・ケア連合学会
http://www2.c-linkage.co.jp/jpca2018/
人工知能、ポリファーマシー、地域医療や社会保障制度などの話を聞きながら、自分の知識のアップデイトしながら、いつものもやもやぐるぐるしてました。
最近のもやもやの第一位は医療化です。
医療化(medicalization)とは「以前は医療の対象とは見なされなかった、宗教、司法、教育、家庭などの社会生活のなかで起こっているとされてきたさまざまな現象が、次第に医療の対象とされるようになっていくこと。「落ち着きのない子ども」「子どもの成績不振」が、多動症、学習障害として認識されるようになったことや、妊娠、出産、死など、かつては家族、共同体、宗教によって担われていた現象が、今日では医療現場で取り扱われるようになっていることなどが医療化の例として挙げられる。」
製薬企業が新しい治療薬ができれば医療化はすすみます。またウェアラブルで様々な生体データをとることでも医療化はすすみます。データが集まり、基準ができれば人間はその基準のこっち側の人とあっち側のの人になってしまいます。しかし我が国の経済発展を考えれば医薬品の開発や技術開発は進めていかねばならないものです。そのような世界では新たな価値観が生まれるのだと思います。そして医療化は一方向のみにおこるものではなく、脱医療化というものも起こると言われています。そういったことを考えながら人工知能時代の人間はどうなるのかを考えていました。
もやもや第二位は「社会的処方(Social Prescribing)」です。
イギリスで行われている仕組みですが、「既存の医療の枠組みでは解決が難しい問題」のために、「地域とのつながり」を処方することで問題を解決するというものです。イギリスのことをもう少し知らなけばならないのですが、人間って地域とのつながりを紹介されれば健康になれるものなのかということです。これをするのは少なくとも田舎じゃないだろうなとか、日本人がそんなに自ら動くかな?という疑問とかを持ちながら、いまの医療保険とか介護保険などの状況も加えて考えていました。
そうはいっても答えがでるものでもなく、学会は色々な方との再会の場でもあるので楽しくお話もしていました。
私はポスター発表です。「人生の最終段階の意思決定支援のために行った当院の倫理サポートチームの地域包括ケア推進における活動」というタイトルです。
急性期病院に運ばれてくるときは意思確認できないことも多く、ACPは地域で療養中に行うのがいいとされています。当院でも同様のことが数多く起こっており、地域の医療スタッフの方とワークショップを行った時の内容を発表しました。
事前アンケートをとったのですが、患者・利用者の方と人生の最終段階について話をした経験のある方が多くいました。参加者の分布をみるとケアマネージャーの方が多く、生活のことを聞くとき何かのタイミングでお話されているのでしょうね。しかしその情報は診療情報提供書にはほとんど反映されませんし、ケアマネージャーの方々も患者さんの価値情報や生活などの情報を急性期病院で必要だと思わなかったという意見もきけたのはよかったことです。この地域の情報がうまくつなげる仕組みができれば患者さんに良い医療を提供できると思います。
津といえば鰻なのでちゃんと食べてきました。
実家のある名古屋から1時間くらいところなのですが、地方都市で1時間は遠いところです。そのため駅を降りたのは初めてでした。
朝のお散歩しにいったのは三重県護国神社と四天王寺です。
今回の学会は自分の発表もありましたが、興味のあるテーマがたくさんあって、聞きにいけなかったものがいくつもありました。
第9回日本プライマリ・ケア連合学会
http://www2.c-linkage.co.jp/jpca2018/
人工知能、ポリファーマシー、地域医療や社会保障制度などの話を聞きながら、自分の知識のアップデイトしながら、いつものもやもやぐるぐるしてました。
最近のもやもやの第一位は医療化です。
医療化(medicalization)とは「以前は医療の対象とは見なされなかった、宗教、司法、教育、家庭などの社会生活のなかで起こっているとされてきたさまざまな現象が、次第に医療の対象とされるようになっていくこと。「落ち着きのない子ども」「子どもの成績不振」が、多動症、学習障害として認識されるようになったことや、妊娠、出産、死など、かつては家族、共同体、宗教によって担われていた現象が、今日では医療現場で取り扱われるようになっていることなどが医療化の例として挙げられる。」
製薬企業が新しい治療薬ができれば医療化はすすみます。またウェアラブルで様々な生体データをとることでも医療化はすすみます。データが集まり、基準ができれば人間はその基準のこっち側の人とあっち側のの人になってしまいます。しかし我が国の経済発展を考えれば医薬品の開発や技術開発は進めていかねばならないものです。そのような世界では新たな価値観が生まれるのだと思います。そして医療化は一方向のみにおこるものではなく、脱医療化というものも起こると言われています。そういったことを考えながら人工知能時代の人間はどうなるのかを考えていました。
もやもや第二位は「社会的処方(Social Prescribing)」です。
イギリスで行われている仕組みですが、「既存の医療の枠組みでは解決が難しい問題」のために、「地域とのつながり」を処方することで問題を解決するというものです。イギリスのことをもう少し知らなけばならないのですが、人間って地域とのつながりを紹介されれば健康になれるものなのかということです。これをするのは少なくとも田舎じゃないだろうなとか、日本人がそんなに自ら動くかな?という疑問とかを持ちながら、いまの医療保険とか介護保険などの状況も加えて考えていました。
そうはいっても答えがでるものでもなく、学会は色々な方との再会の場でもあるので楽しくお話もしていました。
私はポスター発表です。「人生の最終段階の意思決定支援のために行った当院の倫理サポートチームの地域包括ケア推進における活動」というタイトルです。
急性期病院に運ばれてくるときは意思確認できないことも多く、ACPは地域で療養中に行うのがいいとされています。当院でも同様のことが数多く起こっており、地域の医療スタッフの方とワークショップを行った時の内容を発表しました。
事前アンケートをとったのですが、患者・利用者の方と人生の最終段階について話をした経験のある方が多くいました。参加者の分布をみるとケアマネージャーの方が多く、生活のことを聞くとき何かのタイミングでお話されているのでしょうね。しかしその情報は診療情報提供書にはほとんど反映されませんし、ケアマネージャーの方々も患者さんの価値情報や生活などの情報を急性期病院で必要だと思わなかったという意見もきけたのはよかったことです。この地域の情報がうまくつなげる仕組みができれば患者さんに良い医療を提供できると思います。
津といえば鰻なのでちゃんと食べてきました。
2018年6月15日金曜日
インフォームドコンセントってどんなコンセント?
去る5月10日、24日にがんの保障研究会のセミナーを実施しました。
前回のセミナーと内容は全くことなり、医療リテラシーのことが中心にお話ししました。
対象の方が保険の営業の方なので、なるべく簡単にお話しようと心がけたのですがそもそもの理解が違う人への話は難しいです。
こちらが専門用語だと思っていなくても専門用語に聞こえてしまうものもあるし、保険を売りたくてしょうがない人にとっては正しいか正しくないかよりも、売れればよかったり感謝されればよいという医療者とは全くことなる価値観があります。
また時間が十分にあれば丁寧に話せることも、極端に言えば一つのことしか話せません。それも私からすると乱暴だと感じるくらいの端折りぐあいです。
これが一般の人の感覚なんでしょうね。とてもいい勉強させてもらいました。
トンデモ医療を信じる人の思考ってきっとこういうところにあるんだと感じました。多分医療者が誠実であったとしても自分の信じたことしか信じない。
最近の情報ではトンデモ医療をしている医師を招いた勉強会の話を聞きます。その人はまさに正しいことよりもどのがんにも効果があるように上手く話をします。
色々と考えてしまいました。。。
2018年5月5日土曜日
遺伝子検査ってしたい?
先日Gattacaを見ました。1998年の映画なのですが今の世の中を考えるにはとてもいい映画でした。
遺伝子操作により、優れた知能と体力と外見を持った「適正者」といい、一方、自然妊娠で生まれた「不適正者」という社会。「不適正者」は社会的にも差別されていた。主人公ヴィンセント(イーサン・ホーク)は、「不適正者」として産まれた。弟アントン(ローレン・ディーン)は「適正者」だった。その主人公が「適正者」になりすまし、宇宙を目指すお話です。
先日、こんな記事がネットにありました。
自閉症の科学6: 遺伝子の変異による発達障害を胎児期に治療する(YAHOOニュース2018年5月4日)
タイトルは自閉症とありますが、ここで紹介されている論文はX染色体連載低発汗性外胚葉異形成症(XLHED)と出生前診断された胎児に対して治療を行うものです。
またこのような記事もありました。
認知症の原因物質減少を確認 理化学研、ゲノム編集で(東京新聞2018年5月4日)
受精卵をゲノム編集してアミロイドベータがほとんど蓄積しないマウスを発見しました。
皆さんはどのように感じますか?
最近は簡単に遺伝子検査ができるようになってきていますが、自分の遺伝子を調べて病気の予防をしたいですか? アンジェリーナ・ジョリーは健康なのに乳がんのリスクが高い遺伝子をもっているからといって乳房を切除してしまいました。
また生まれてくる子供の出生前診断について病気や障がいのリスクなどもわかるようになってきていますが、それに対して妊娠中絶がくらいされているか明らかになっていないというのもあります。
遺伝子操作により、優れた知能と体力と外見を持った「適正者」といい、一方、自然妊娠で生まれた「不適正者」という社会。「不適正者」は社会的にも差別されていた。主人公ヴィンセント(イーサン・ホーク)は、「不適正者」として産まれた。弟アントン(ローレン・ディーン)は「適正者」だった。その主人公が「適正者」になりすまし、宇宙を目指すお話です。
先日、こんな記事がネットにありました。
自閉症の科学6: 遺伝子の変異による発達障害を胎児期に治療する(YAHOOニュース2018年5月4日)
タイトルは自閉症とありますが、ここで紹介されている論文はX染色体連載低発汗性外胚葉異形成症(XLHED)と出生前診断された胎児に対して治療を行うものです。
またこのような記事もありました。
認知症の原因物質減少を確認 理化学研、ゲノム編集で(東京新聞2018年5月4日)
受精卵をゲノム編集してアミロイドベータがほとんど蓄積しないマウスを発見しました。
皆さんはどのように感じますか?
最近は簡単に遺伝子検査ができるようになってきていますが、自分の遺伝子を調べて病気の予防をしたいですか? アンジェリーナ・ジョリーは健康なのに乳がんのリスクが高い遺伝子をもっているからといって乳房を切除してしまいました。
また生まれてくる子供の出生前診断について病気や障がいのリスクなどもわかるようになってきていますが、それに対して妊娠中絶がくらいされているか明らかになっていないというのもあります。
がん治療において特定の遺伝子型に対して効果の高い医薬品を使うための遺伝子検査は歓迎しますが、出生前診断については私はすべきではないと考えています。デザイナーベイビーも技術的には凄いと思いますがそれを臨床に適応すべきとは思いません。
技術がどんどんすすんできているのに、その使いかたに関する議論がなかなか進まないのがとても気になっています。
2018年5月3日木曜日
薬局のイノベーション
地域医療をしっかり勉強する会でお話をさせていただく機会がありました。
テーマは「薬局のイノベーション」でした。
どのような話をしたかというと、基本はこれまでに書いたコラムとかつぶやきの内容とかわりません。
保険診療におけるかかりつけ薬剤師とか薬局にもとめられているものは以下の3つです。
1.服薬情報の一元的・継続的把握
2.24時間対応・在宅対応
3.医療機関等の連携
患者のための薬局ビジョン
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000102179.html
これを読んでいると、この3つの機能ってかかりつけ薬局・薬剤師である必要があるのかなという疑問がわきます。
仮にカルテが一元管理、もしくは個人の情報としてクラウドに管理されていて本人が同意すれば見られる仕組みがあれば患者にとってかかりつけ薬局や薬剤師である必要はあまりないのではないでしょうか。処方された薬が何からの形で患者に届き、相談アドバイスは人工知能が行う。
そういった視点でこの動画を見てください。
society5.0に向けて様々なところで規制緩和が議論されています。医療もその一つです。http://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/index.html
私は医薬品の情報提供と薬局・薬剤師の医薬品の監視体制とは分けて議論することが大事だと考えています。
薬局でなかなか薬が出てこないのは、簡単に薬が人の手に渡らないようにして医薬品の安全管理をしているからです。重複や相互作用の確認や間違ったものが手に渡らないようにするために「薬剤師」が確認をしてから患者に渡す仕組みなのですから大変だし、コストがかかります。
しかしこれらもシステムで解決できる部分が沢山あります。
そう考えていくとかかりつけである意味をどこに持たせる必要があるのかという問いに戻るのです。薬局・薬剤師のもつ使命は医薬品の安全管理をし、社会の健康を守るということだと思います。
薬局のイノベーションは薬剤師がその使命を果たすために新しい技術を使って何をするかを考えていくことそのものなのではないかと思います。
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