2016年6月7日火曜日

学会運営と製薬企業の情報提供を考える


2016年6月3〜5日にアクトシティ浜松で第10回日本緩和医療薬学会年会が行われました。私は4日、5日と参加しました。いくつかのセッションに参加したのですが、一つにできないので、分けてアップします。

この学会は友人の川村和美さんがプロデューサーでして、「ともちゃんの好きそうな内容をいっぱいやるから来て」と言われて参加しました。彼女と私は経営倫理、薬剤師、教育など共通する部分がいくつかあります。まったくもって面白いものがいっぱいでした。

中でも一番よかったのがこれです。

  

<医療系学会は派手すぎる>
今回のパネラーからの指摘もありましたが、医療系の学会って派手です。私は仕事柄医療系の学会からスタートしたので、それが当たり前だと思っていました。
ホテルの宴会場を使い、きらびやかなセッション、派手な演出、ランチョンセミナーに懇親会。一体いくらかかっているのでしょうか。数千万円はくだらないと思います。

それに対して製薬企業を始め、関係している企業が協賛金を払っています。
私がMRをしていたころは抄録の広告代として数万円を当たり前のように依頼されていました。大きな学会となるとブースの展示ということでブース一コマうん十万円の×コマ数です。他にも寄付というものもありました。一応、趣意書は渡されますが、いつも不機嫌そうに話をする先生が、そういうときに限ってニコニコ声をかけるんですよね。私も、「まな何かお願い事だな」とわかって話をすると「あ、やっぱり」という感じでした。

プロモーションコード、公正競争規約が年々厳しくなっていくうちに少しづつは変わっていっているのですが昔は一体どんだけだったのでしょうね。透明性ガイドラインが出てからも抵抗をするのは医療者側という感覚を私は持っています。仲のよい医療者にはこの実態を嫌だということを話していたのですが、なかなか声高にいうことは難しかったです。ところが、今回は学会のあり方を考えるということを医療者側から問題提起をしてくれたのです。

<製薬企業は医療者の財布じゃありません>
私は常々安易に製薬企業からお金をだしてもらうのは当たり前という考えをすててもらいたいと思っています。しかしその考えはなかなか受け入れてもらえないと思います。学会協賛のあり方を考えたとき、製薬企業が突然協賛金を払わないと言ったら医療者側はすぐに納得するでしょうか。協賛金を払って横並びで採用を確保している会社があるとしたら簡単に切り替えられてしまうでしょう。

それに対してMRはどうにか自分の売り上げ成績を維持したいと考えるのは当然だと思います。私たちの時代もだんだん経費が厳しくなってきた時代だったので、いままでどおりの分を払えなくなっていました。そのときに医療者に交渉することは何かというと、守りたい品目と古くて営業成績にはあまり関係のない品目を考えながら、依頼してきた医療者と交渉をしていきます。断り方にいろいろあるのですが、その学会の協賛をしない代わりに別のことで(たとえば他の企画の勉強会など)経費項目を変える方法やもう切られていいと思ったら断るということを考えます。

よく考えてみたら、これはおかしなことですよね。確かに似たような薬効のものはあるのですが、それが患者にとって一番合っているものかもしれません。それをお金の都合だけで切ってしまっていいのでしょうか。実際にはそれほど影響がないと言ってしまえばそうなのかもしれせんが、本来の医薬品の情報提供のあり方からすると明らかにおかしなことです。それをお金で簡単に変える医療者も医療者だし、それをよしとして自分の利益だけを考える企業も企業だと思います。

今回、学会側からそういうのやめませんか?、もっと健全に学術活動の学会にしませんかと運営面から少しずつ変えたのがこの学会です。


 

これまでのやり方を変えたので本当に和美さんは苦労していました。できるだけお金のかからない方法を考えて、ランチョンではなくスイーツセミナーにしてそのスイーツは学会費からの捻出にしています。学会を企業の情報提供の場として時間を売る方法を提案しました。とても画期的です。それでも彼女がやりたかったことの全てには到底いくものではありませんでした。

<製薬企業の真っ向の情報提供活動とは>
もし、これがほかでも同じようになっていったら?どうなるでしょう。
製薬企業は、学会にふさわしい情報提供をしていく必要が出てきます。自社製品に都合のよい内容を伝えるのではなく、客観的かつ臨床現場にあった情報を伝えなくてはなりません。ふと、今のMRのレベルではそれは対応できないかもしれません。なぜならば、添付文書の内容しかMRは伝えられないプロモーションコードになっているからです。このプロモーションコードについてはまた改めて詳しく書こうと思いますが、学会で議論をするには添付文書の内容を超えて議論すべきときにそれが邪魔になってしまいます。こういったわけのわからないルールも変えないと真っ向の情報提供活動はできません。

製薬企業にとって情報提供活動は使命です。適正使用情報ってなんでしょうか。添付文書の内容だけなんでしょうか?それは違うと思います。患者にあった使い方なのではないでしょうか。添付文書の内容は承認内容に関係する分だけです。しかし医薬品は生体内で様々な働きをします。それを考えたときに承認内容に関する部分だけでいいはずがありません。それを学会だからこそきちんと伝えられるのではないかと私は思います。

まだまだ議論は始まったばかりなので、これも多くの人と議論したい内容です。

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